FOMC・日銀・連休が重なる週、感情で判断しない投資術

2026年9月は、株式市場にとって少し珍しい週になっている。9月15日から16日にかけてFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、その直後の9月17日から18日には日銀金融政策決定会合が控える。さらに9月19日から23日までは、11年ぶりとなるシルバーウィーク5連休だ。重要な金融政策イベントが2つ連続し、そのまま長い連休に突入するという組み合わせは、振り返ってもあまり例がない。

直前の9月14日には、AI開発減速論をきっかけにAI関連株が急落する場面もあった。詳しい経緯はAI減速論・原油高・中東情勢の連想ゲームで整理した通りだが、単一の材料でも相場が大きく動きうることを、この週が始まる直前に市場はすでに経験している。

本記事では、このように重要イベントが立て続けに重なる週になぜ値動きが荒くなりやすいのか、そしてそうした局面でこそ「いつもと違う特別な判断」をするのではなく、事前に決めたルールを淡々と守ることがなぜ重要なのかを、行動心理学の観点から整理する。


2026年9月、何が重なっているのか

まずは今週のスケジュールを一覧にしておく。

日程イベント
9月15日〜16日FOMC(米連邦公開市場委員会)
9月17日〜18日日銀金融政策決定会合
9月19日〜23日シルバーウィーク5連休(11年ぶり)

FOMCが日本株に波及する経路についてはFOMC・米金利と日本株で、日銀会合の基本的な見方については日銀金融政策決定会合のスケジュールと見方で、それぞれ詳しく解説している。今週特有なのは、この2つの金融政策イベントが間を置かずに連続し、結果が出そろった直後に5営業日分もの連休へなだれ込む点だ。

FOMCの結果を受けて日本株が反応する間もなく日銀会合を迎え、その結果への反応も消化しきれないうちに市場が5日間閉まる。通常であれば数週間かけて消化される材料が、1週間に凝縮されている格好だ。


なぜ材料が重なる週は値動きが荒くなりやすいのか

理由は大きく2つある。

1. 持ち高調整が短期間に集中する

FOMC、日銀会合という2つの重要イベントを前に、投資家はそれぞれのタイミングでポジションを見直す動機を持つ。加えて連休を控えていれば、連休中の値動きリスクを避けるために持ち高を減らしておきたいという投資家も出てくる。これらの調整が同じ週に重なることで、材料が出るたびに売買が集中し、値動きが増幅されやすくなる。

2. 連休で流動性が薄くなる時間帯が生まれる

日本市場が5連休で閉まっている間も、海外市場は通常通り動き続ける。連休中に大きなニュースが出た場合、日本の投資家はすぐに売買で反応することができず、連休明けにまとめて反応することになりやすい。この「反応できない時間」の存在自体が、連休前のポジション調整を慎重にさせる材料にもなる。


イベント時に人はなぜ「いつもと違う判断」をしてしまうのか

ここからが本題だ。材料が重なり値動きが荒くなる週そのものは避けられないとしても、そこでの「判断の仕方」は自分でコントロールできる。行動心理学の知見は、こうした局面でこそ人がルールから逸脱しやすいことを教えてくれる。

プロスペクト理論では、人は利益より損失を強く感じる「損失回避」の傾向を持つとされる。含み損を抱えた状態でイベントを迎えると、損失を確定させたくないという心理が働き、本来であれば損切りすべき場面で判断を先送りしてしまいやすい。この仕組みについては損切りできない心理で詳しく解説している。

逆に、値動きが荒くなる局面では「このタイミングを逃したくない」という焦りから、普段より大きなポジションを取ってしまう心理も働きやすい。不確実性が高くニュースが次々と流れる状況は、平常時であれば冷静に判断できる人でも感情が動きやすくなる典型的な条件がそろっている。

つまり、イベントが重なる週というのは「材料そのものの多さ」だけでなく、「投資家の感情が動きやすい条件」も同時に重なっている週だと言える。値動きが荒くなりやすいだけでなく、その荒れた値動きを前にした投資家自身の判断も、普段より不安定になりやすいという二重の意味で注意が必要になる。


「特別な判断」ではなく「普段のルール」を守る

こうした局面で重要なのは、材料の多さに合わせて「今回は特別だから」と普段と違う判断をすることではなく、平時に決めたルールをそのまま淡々と適用することだ。理由は単純で、ルールは冷静な状態であらかじめ決めたものであり、感情が動きやすい局面でその場の判断力に頼るよりも信頼できるからだ。

事前に決めておくべきルールは、主に次の3つに整理できる。

ルール目的
損切りライン想定より大きく動いた場合に損失を限定する
ポジションサイズ1つの材料・1つの銘柄への依存度を抑える
現金比率予想外の下落局面でも冷静に対応できる余力を残す

損切りラインの具体的な決め方や仕組み化の方法は損切りルールの作り方で解説している。重要なのは、これらのルールをイベント直前になって考え始めるのではなく、平時のうちに数値として決めておき、イベント週にはそれをただ実行するだけの状態にしておくことだ。判断の余地を残すほど、感情が入り込む隙も大きくなる。


今週のような週にありがちな失敗パターン

イベントが重なる週には、いくつか典型的な失敗パターンがある。

  • 連休前の下落を見て、普段の損切りラインより早く、あるいは遅く売ってしまう
  • FOMCと日銀会合の結果を見比べようとして判断を先延ばしにし、結局どちらの結果にも対応しきれない
  • 連休中の値動きリスクを過度に恐れて、本来の投資方針にない持ち高整理をしてしまう
  • 逆に「どうせ連休中は動かない」と油断して、普段より大きなポジションを持ち越してしまう

これらに共通するのは、いずれも「今回は特別だから」という理由で、平時のルールから外れた判断をしている点だ。特別に見える局面ほど、実は普段のルールをそのまま適用することの価値が高い。


まとめ

  • 2026年9月は、FOMC(9/15〜16)、日銀金融政策決定会合(9/17〜18)、11年ぶりのシルバーウィーク5連休(9/19〜23)が立て続けに重なる珍しい週になっている
  • 重要イベントの連続と連休前の持ち高調整が重なることで、値動きが普段より荒くなりやすい
  • 行動心理学的には、こうした不確実性の高い局面ほど感情が動きやすく、損失回避などのバイアスによって普段と違う判断をしてしまいやすい
  • 重要なのは「今回は特別だから」と特別な判断をすることではなく、平時に決めた損切りライン・ポジションサイズ・現金比率のルールを淡々と守ることである
  • ルールは冷静なときに決め、イベント週にはそれを実行するだけの状態にしておくことが、荒れやすい週を乗り切る助けになる

材料が重なる週は、どうしても値動きに気を取られやすい。しかし、こうした週こそ自分がすでに決めているルールに立ち返り、それを淡々と実行できるかどうかが問われる局面でもある。


※本記事は2026年9月16日時点の情報を基にした一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

よくある質問

なぜイベントが重なる週は値動きが荒くなりやすいのですか?

FOMCや日銀会合のような重要イベントは、それぞれ単独でも金利観測の変化を通じて株価を動かす材料になります。同じ週に複数重なると、投資家の思惑や持ち高調整が短期間に集中しやすく、材料が出るたびに値動きが増幅されやすくなります。加えて連休を挟む場合は流動性が薄くなる時間帯も生まれ、値動きがさらに荒くなりやすい面があります。

連休前にポジションを整理したほうがよいのですか?

一律に「整理すべき」とは言えません。重要なのは連休直前に慌てて判断するのではなく、平時から決めているポジションサイズや損切りラインのルールを、連休をまたぐ場合にも変わらず適用することです。連休中に海外市場で大きな材料が出た場合の値動きも想定したうえで、自分が納得できる持ち高かどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。

イベント時に「いつもと違う判断」をしてはいけないのはなぜですか?

行動心理学では、不確実性が高く感情が動きやすい局面ほど、人は普段のルールから逸脱した判断をしやすいことが知られています。恐怖や焦りから衝動的に売買したり、逆に楽観から普段より大きなポジションを取ったりすると、事前に想定していたリスク管理の前提が崩れてしまいます。特別な状況だからこそ、普段のルールをそのまま守る姿勢が重要です。

損切りラインやポジションサイズは具体的にどう決めればよいですか?

銘柄の値動きの荒さやトレードスタイルによって最適な数値は異なりますが、1回のトレードで許容する損失を総資産の一定割合に抑える、値動きの荒い局面では持ち高を普段より小さくするなど、あらかじめ数値で基準を決めておくことが基本です。感情ではなく事前に決めたルールで機械的に判断できるようにしておくことが、荒れやすい週を乗り切る鍵になります。

戦略太郎 @kabu_strategy_g

医学生 × 個人投資家 × 個人開発者。日本株の需給・信用取引を中心に売買しながら、 相場の「しくみ」を数字で検証する記事と、投資計算ツールをNext.jsで開発・公開しています。