コロナショックの教訓 — 狼狽売りしないための準備
2020年3月、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大をきっかけに、日米欧の株式市場は短期間で大きく値を下げました。いわゆる「コロナショック」です。この暴落は歴史的に見てもスピードが速かったと言われており、それまで安定した相場に慣れていた個人投資家にとって、強い衝撃だったのではないでしょうか。
一方で、その後の回復も比較的早かったとされ、暴落時に売却した投資家と、保有を続けた投資家・買い増した投資家との間には、その後の資産推移に大きな差が生まれたと言われています。本記事では、コロナショックの経緯を簡潔に振り返りながら、狼狽売りしないための事前準備について整理します。
コロナショックの経緯を簡単に振り返る
2020年初頭、新型コロナウイルスの感染が中国から世界各国へ広がり始めると、経済活動の停止や渡航制限への懸念が急速に強まりました。2月後半以降、世界的な株価の下落が始まり、3月にかけて下落が加速したと言われています。
| 時期(目安) | 市場で起きていたとされること |
|---|---|
| 2020年1月〜2月前半 | 感染拡大の報道はあったが、株価は比較的堅調に推移 |
| 2020年2月後半 | 世界的な感染拡大懸念から株価の下落が始まる |
| 2020年3月 | 下落が加速し、世界的な急落局面となる |
| 2020年3月後半〜 | 各国の金融緩和・財政出動などを背景に反発が始まったとされる |
| 2020年後半以降 | 市場全体としては回復基調が続いたとされる |
この表はあくまで大まかな流れを示したものであり、個別の指数や銘柄によって値動きの詳細は異なります。重要なのは、下落から反発までの一連の流れが、歴史的に見ても比較的短い期間で起きたとされている点です。
なぜ「暴落の速さ」が問題になるのか
暴落そのものよりも厄介なのは、その「速さ」だとよく言われます。時間をかけてゆっくり下落する相場であれば、投資家は状況を見ながら対応を検討する余裕があります。しかしコロナショックのように短期間で急落が進むと、多くの投資家が判断を下す時間的余裕を持てないまま、含み損だけが急速に膨らんでいく状況に直面しました。
このような局面では、冷静な分析よりも先に「これ以上損を広げたくない」という感情が強く働きやすくなります。行動経済学でいう損失回避のメカニズムについては損切りできない心理でも触れていますが、暴落の速さは、この心理的な圧力をさらに強める方向に作用します。結果として、下落の底に近いタイミングで売却してしまう、いわゆる狼狽売りが起きやすくなるのです。
狼狽売りした投資家と踏みとどまった投資家の違い
コロナショックの局面で投資家が取った行動は、大きく分けて次の3パターンに整理できると言われています。
| 行動パターン | 特徴 | その後の傾向として語られること |
|---|---|---|
| 狼狽売り | 下落の途中や底値圏に近いタイミングで保有株を売却 | 反発局面の恩恵を受けにくかったとされる |
| 保有継続 | 当初の投資方針を維持し、売買せずに保有を続けた | その後の回復局面をそのまま享受できたとされる |
| 買い増し | 下落局面で計画的に買い増しを行った | 平均取得単価を下げられたケースがあったとされる |
もちろん、これは結果論として語られやすい整理であり、当時どの行動が「正解」だったかは事後的にしか分かりません。しかし、この3パターンを分けた要因として繰り返し指摘されるのは、暴落前から「暴落時にどう行動するか」をあらかじめ考えていたかどうかという点です。狼狽売りをしてしまった投資家の多くは、下落局面に入って初めて判断を迫られ、恐怖心が先に立ってしまったケースが多かったと言われています。
暴落前に準備しておきたいこと
暴落が実際に起きてから冷静な判断をするのは、想像以上に難しいことです。だからこそ、平時のうちに準備しておくべきことがいくつかあります。
1. 現金比率をあらかじめ決めておく
資産のすべてを株式に投じてしまうと、暴落時に買い増す余力がないだけでなく、生活防衛資金まで目減りしてしまうリスクがあります。暴落時に慌てないためにも、生活費とは別に一定の現金を確保しておくことが大切です。当面の生活防衛資金の考え方については生活防衛資金の作り方で詳しく整理しています。
2. 暴落時の行動ルールを事前に決めておく
「株価が〇%下がったら追加投資する」「損切りラインはあらかじめ決めておく」といったルールを、平時の冷静なタイミングで決めておくことが重要です。暴落の渦中で新たにルールを考えようとしても、恐怖心に判断が引っ張られてしまいます。具体的な損切りルールの作り方は損切りルールの作り方を参考にしてください。
3. 積立・分散でタイミングを考えなくてよい仕組みを作る
暴落の「今が底かどうか」を正確に見極めることは、プロの投資家でも困難です。むしろ、一定額を定期的に投資し続けるドルコスト平均法のような仕組みを取り入れておけば、暴落局面でも機械的に買い続けることができ、狼狽売りの誘惑からも距離を置きやすくなります。詳しくはドルコスト平均法とはで解説しています。
4. 自分の判断や感情の記録を残しておく
暴落のさなかに「なぜ自分は売りたくなっているのか」を客観視するのは難しいものです。平時から売買の理由や、そのときの心理状態を記録しておく習慣があると、暴落時にも「これはいつものパターンだ」と気づきやすくなります。記録の付け方については投資日記のつけ方にまとめています。
5. ポートフォリオ全体のバランスを定期的に見直す
暴落は特定のセクターや資産クラスに偏っていた場合、影響がより大きくなることがあります。平時からポートフォリオ全体のバランスを定期的に見直しておくことも、暴落時の影響を和らげる備えの一つです。具体的な見直し方はポートフォリオのリバランスで解説しています。
「暴落を予測すること」より「暴落に備えること」
コロナショックのような急落は、いつ、どのようなきっかけで起きるかを事前に正確に予測することはほぼ不可能だと言われています。感染症の拡大というきっかけは、当時ほとんどの投資家にとって想定外だったはずです。次に暴落が起きるきっかけも、おそらく現時点では誰も正確には予想できません。
だからこそ重要なのは、「次の暴落がいつ来るか」を当てようとすることではなく、「暴落が来たときにどう行動するか」をあらかじめ決めておくことだと言えるでしょう。現金比率、損切りルール、積立の仕組み、記録の習慣——これらはどれも、暴落が起きる前の平時にしか準備できないものです。
まとめ
- 2020年3月のコロナショックは、歴史的に見ても下落のスピードが速かった暴落の一つとされ、その後の回復も比較的早かったと言われている
- 暴落の速さは、狼狽売りを誘発しやすい心理的な圧力を強めると考えられる
- 狼狽売りした投資家と踏みとどまった投資家・買い増した投資家を分けた要因の一つとして、暴落前の準備の有無が挙げられる
- 現金比率の確保、暴落時の行動ルール、積立の仕組み、記録の習慣といった準備は、いずれも平時のうちにしかできない
暴落そのものを避けることはできませんが、暴落時にどう振る舞うかは、事前の準備次第である程度コントロールできます。次の暴落局面を「想定外の出来事」ではなく「想定していた出来事」として迎えられるよう、平時のうちから準備を進めておきたいところです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。過去の相場の教訓は将来の相場を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
よくある質問
コロナショックとはどんな出来事でしたか?
2020年2月末から3月にかけて、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大への懸念から、日米欧の主要株価指数が短期間で大きく下落した出来事です。歴史的に見ても下落のスピードが速かった暴落の一つとされています。
コロナショックはどのくらいの期間で下落し、回復したのですか?
下落自体は数週間という短い期間に集中したと言われており、その後の回復も比較的早かったとされています。ただし具体的な下落率や日数は相場環境によって変わるため、本記事では断定的な数値の紹介は避けています。
暴落時に狼狽売りしないためにはどうすればよいですか?
暴落が起きてから考えるのではなく、平時のうちに現金比率や損切りルール、買い増しの基準をあらかじめ決めておくことが重要です。ルールがあれば、感情ではなくあらかじめ決めた基準に沿って行動しやすくなります。
暴落時に買い増しした投資家と狼狽売りした投資家の違いは何ですか?
一概には言えませんが、事前に暴落を想定した現金を用意していたか、そして短期的な値動きに動揺せず当初の投資方針を維持できたかという点が、両者を分けた要因の一つとして挙げられます。