単元未満株の買増請求権とは?100株の単元株にする方法

単元未満株をコツコツ買い増してきたものの、「あと少しで100株、1単元に届く」という場面で悩むのが、証券会社で普通に追加注文を出すべきか、それとも会社に直接請求して不足分を取得すべきか、という選択です。実はこの後者の方法にあたるのが「買増請求権」という制度です。

この記事では、単元未満株主が単元株主になるための買増請求権の仕組みを、よく似た買取請求権との違いや、証券会社を通じた通常の買い増しとの違いを交えながら整理します。

買増請求権とは何か

買増請求権とは、単元未満株を保有する株主が、発行会社に対して「不足している株数を売ってほしい」と請求できる権利のことです。会社法192条・194条を根拠とする制度で、請求が認められると、会社が保有する自己株式などから不足分の株式が株主に交付され、保有株数が1単元(多くの企業で100株)に達します。

たとえば1単元100株の銘柄を70株保有している株主が買増請求権を行使すると、不足する30株を会社から取得し、合計100株の単元株主になれる、という流れです。これにより、それまで議決権のなかった単元未満株主が、通常の株主としての権利を一通り持つ単元株主に変わります。

単元未満株そのものについての基礎知識は、単元未満株(S株・ミニ株)とはで詳しく解説しています。まだ制度の全体像を把握していない方は、先にそちらを読んでおくと理解がスムーズです。

買取請求権との違い

買増請求権とセットで語られることが多いのが「買取請求権」です。名前が似ているため混同されがちですが、方向性はまったく逆です。

  • 買取請求権:単元未満株を会社に買い取ってもらい、現金化する権利
  • 買増請求権:不足している株数を会社から買い増し、単元株にする権利

買取請求権は「株を手放して現金にしたい」人のための制度で、単元未満株制度を採用している会社であれば原則として対応が必要とされています。一方、買増請求権は「株を増やして通常の株主になりたい」人のための制度であり、会社が定款で買増請求に応じる旨を定めている場合にのみ利用できます。つまり、買取請求権に比べて買増請求権に対応していない会社が一定数存在する点に注意が必要です。

株式分割・併合によって生じる端株の処理と絡めて、この2つの請求権をさらに詳しく比較した記事が株式分割・併合で生まれる端株はどうなるです。あわせて読むと制度の使い分けがより明確になります。

買増請求できる株数の考え方

買増請求権で取得できる株数は、「1単元に不足している株数」に限られます。たとえば以下のように計算します。

保有株数1単元買増請求できる株数
30株100株70株
55株100株45株
99株100株1株
100株(すでに単元)100株請求不可(すでに単元株)

すでに1単元に達している株主は、そもそも単元未満株を保有していないため買増請求の対象外です。また、複数回に分けて少しずつ買増請求をすることも制度上は可能ですが、証券会社によって受付の単位や回数制限が異なるため、事前に取引先の証券会社に確認しておくのが確実です。

なお、買増請求時の取得価格は、市場価格や算定基準日の株価をもとに決定されるのが一般的で、証券会社を通じた通常注文の約定価格とは算定方法が異なる場合があります。この点は次の項目で詳しく比較します。

単元株になることで得られるメリット

単元未満株のままでは制約されていた権利が、買増請求権の行使によって単元株主になることで解放されます。主なメリットは次の3つです。

1. 議決権が得られる

単元未満株には株主総会での議決権がありませんが、1単元に達すると議決権を行使できるようになります。会社の経営方針に対して自分の意思を反映させたい株主にとっては大きな違いです。議決権や株主総会の仕組みについては株主総会とはで詳しく解説しています。

2. 株主優待の対象になりやすい

株主優待の多くは「1単元(100株)以上の保有」を条件としています。単元未満株のままでは優待をもらえなかった銘柄でも、単元株化することで優待の権利が得られるケースが多くなります。優待狙いで買増請求権を活用する考え方については単元未満株でも株主優待はもらえる?で掘り下げています。

3. 売買がしやすくなる

単元未満株は、リアルタイムでの約定ができず1日数回のタイミングでまとめて処理される、指値注文ができないといった制約があるのが一般的です。単元株になれば、通常の取引所取引と同じようにリアルタイムで指値・成行注文ができ、売買の自由度が高まります。

単元未満株のまま議決権を持つ方法や制度の限界については、単元未満株と議決権の関係で詳しく整理しているので、あわせて確認してみてください。

証券会社を通じた通常の買い増しとの違い

「不足分を100株にするだけなら、証券会社で普通に追加購入すればいいのでは」と思う方も多いはずです。実際、多くのケースではそちらの方がシンプルで確実です。両者の違いを整理すると次のようになります。

項目買増請求権証券会社での通常の追加購入
請求先発行会社(証券会社経由で申請)市場(証券取引所)
対応可否会社が定款で定めている場合のみほぼすべての銘柄で可能
取得価格算定基準日の株価などをもとに決定市場のリアルタイム価格
注文方法会社所定の請求手続き指値・成行など通常注文
約定タイミング会社の処理サイクルによるリアルタイム〜取引時間中随時
向いている人対応銘柄で確実に不足分だけ取得したい人すぐに単元株にしたい・対応銘柄が限られる人

買増請求権が使えない銘柄の方が多いため、実務上は「証券会社で通常の追加注文を出して100株に到達させる」方法を選ぶ投資家が大半です。買増請求権は、あくまで会社が制度として用意している場合の選択肢の一つと捉えておくとよいでしょう。

なお、単元未満株をNISA口座で買い増していく場合の注意点は、S株を特定口座・NISA口座で買うときの合算ルールで解説しています(口座の合算・非課税枠の考え方を確認したい方向けです)。

まとめ

買増請求権は、単元未満株主が不足分の株式を発行会社から直接取得し、通常の単元株主になるための制度です。買取請求権とは正反対の方向性を持ち、対応の有無は会社の定款次第という点が最大のポイントです。証券会社を通じた通常の追加購入で単元株を目指すのが一般的な選択肢ですが、対応銘柄であれば買増請求権も有力な手段になります。単元株化によって議決権・優待・売買のしやすさが手に入る点を踏まえ、自分の保有銘柄がどちらの制度に対応しているかを事前に確認しておきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。買増請求権の取扱いは証券会社・企業により異なる場合があります。正確な情報は各証券会社の公式情報でご確認ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。

よくある質問

買増請求権とはどんな権利ですか?

単元未満株主が、発行会社に対して「不足分の株式を売ってほしい」と請求できる権利です。請求が認められると、保有株数が1単元(通常100株)に達する分だけ会社から株式を取得でき、通常の単元株主になれます。会社法192条・194条に根拠があり、定款で買増請求に応じる旨を定めている会社が対象です。

買増請求権と買取請求権はどう違いますか?

買取請求権は単元未満株を会社に買い取ってもらい現金化する権利、買増請求権は逆に不足株数を会社から買い増して単元株にする権利です。方向性が正反対で、前者は保有株を手放したい人向け、後者は保有を増やして通常の株主になりたい人向けの制度です。

すべての会社で買増請求権を使えますか?

いいえ、買増請求権は会社が定款で定めている場合にのみ行使できます。買取請求権は単元未満株制度がある会社であれば原則対応が必要とされますが、買増請求権への対応は会社の任意であり、定款に定めがない会社では利用できません。事前にIR情報や証券会社を通じて確認する必要があります。

証券会社での通常の買い増しと何が違いますか?

証券会社を通じた通常の買い増しは市場価格でいつでも売買できる代わりに、端数分だけを確実に会社から取得できる保証はありません。買増請求権は発行会社に対して直接請求する制度で、対応している銘柄であれば不足株数分をまとめて取得できますが、手続きや価格算定の方法が証券会社の通常注文とは異なります。

戦略太郎 @kabu_strategy_g

医学生 × 個人投資家 × 個人開発者。日本株の需給・信用取引を中心に売買しながら、 相場の「しくみ」を数字で検証する記事と、投資計算ツールをNext.jsで開発・公開しています。