グランビルの法則 — 移動平均線を使った売買8つのパターン
グランビルの法則とは
グランビルの法則(Granville's Rules)は、米国のアナリスト、ジョセフ・グランビルが提唱した移動平均線と株価の位置関係から売買タイミングを判断する手法です。1960年代に体系化された古典的な理論ですが、移動平均線が今も世界中で使われている以上、その考え方は現在のチャート分析にもそのまま通用します。
理論の核心はシンプルです。移動平均線は「一定期間の平均取得コスト」を表しており、株価は長期的にこの平均へ回帰したり、そこから離れたりを繰り返します。この株価と移動平均線の距離・向き・交差を4つずつ、合計8つの典型パターンに整理したものがグランビルの法則です。
移動平均線そのものの基礎は 移動平均線の使い方 で解説しています。本記事はその応用編として読んでください。
8つのパターンを一覧で整理
まず全体像を表で押さえましょう。買い4つ・売り4つが、移動平均線を鏡に映したように対称になっているのが特徴です。
| 区分 | No. | 移動平均線の向き | 株価の動き | シグナルの意味 |
|---|---|---|---|---|
| 買い | 1 | 下降が一巡し横ばい〜上向き | 平均線を下から上へ抜く | トレンド転換の初動 |
| 買い | 2 | 上昇中 | 平均線を一時的に下回るが割り込まない | 押し目買い |
| 買い | 3 | 上昇中 | 平均線の上で反発する(タッチせず) | 上昇継続の押し目 |
| 買い | 4 | 下降中 | 平均線から大きく下方乖離した後の反発 | 短期の自律反発(リバウンド) |
| 売り | 5 | 上昇が一巡し横ばい〜下向き | 平均線を上から下へ割り込む | トレンド転換の初動 |
| 売り | 6 | 下降中 | 平均線を一時的に上回るが超えきれない | 戻り売り |
| 売り | 7 | 下降中 | 平均線の下で失速する(超えられず) | 下降継続の戻り |
| 売り | 8 | 上昇中 | 平均線から大きく上方乖離した後の反落 | 短期の過熱調整 |
以下、買い・売りそれぞれ4パターンを掘り下げます。
買いの4パターン
買い1:下降一巡後の上抜け(新規買い)
長く下げてきた移動平均線が下降を止め、横ばいから上向きに転じかけたところで、株価が下から平均線を上抜くパターンです。下落トレンドから上昇トレンドへの転換初動を捉える、最も基本的な買いシグナルです。ゴールデンクロスの考え方と重なります。
ただし平均線がまだ明確に下向きの段階での上抜けはダマシになりやすいため、「平均線の傾きが寝てきたか」を必ず確認します。
買い2:上昇トレンド中の押し目(押し目買い)
上向きの移動平均線に対し、株価が一時的に平均線を下回るものの、すぐに戻るパターンです。トレンドは崩れていないため、この一時的な下落を「押し目」として拾います。実務で最も使いやすく、勝率も比較的安定するパターンです。
買い3:平均線上での反発(順張りの押し目)
上昇トレンド中に株価が平均線まで近づくものの、平均線にタッチする前に反発して上昇を続けるパターンです。押し目2よりも強いトレンドを示し、平均線が明確なサポート(支持線)として機能している状態です。
買い4:大幅下方乖離からの反発(リバウンド狙い)
下降トレンドが続く中で、株価が移動平均線から大きく下に離れすぎた(下方乖離した)後の自律反発を狙うパターンです。売られすぎの反動を取る逆張りで、平均線への回帰(戻り)を狙います。
ただしトレンド自体は下向きなので、あくまで短期のリバウンドと割り切ることが重要です。反発が平均線に届く前に再度失速することも多く、利益確定を早めに設定すべきパターンです。
売りの4パターン
売りは買いの完全な裏返しです。ポジションの手仕舞い、あるいは空売りの判断に使います。
売り5:上昇一巡後の下抜け(新規売り)
上昇してきた移動平均線が上げ止まり、横ばいから下向きに転じかけたところで、株価が上から平均線を下抜くパターン。上昇から下落へのトレンド転換初動で、デッドクロスの考え方に対応します。
売り6:下降トレンド中の戻り(戻り売り)
下向きの移動平均線に対し、株価が一時的に平均線を上回るが超えきれず再び下落するパターン。下降トレンドの中の一時的な戻りを空売りで狙います。買い2の押し目買いの裏返しです。
売り7:平均線下での失速(順張りの戻り売り)
下降トレンド中に株価が平均線まで近づくものの、平均線に届く前に失速して反落するパターン。平均線が明確なレジスタンス(抵抗線)として機能している、強い下降トレンドのサインです。
売り8:大幅上方乖離からの反落(過熱の調整)
上昇トレンド中に、株価が移動平均線から大きく上に離れすぎた(上方乖離した)後の反落を狙うパターン。買われすぎの過熱調整で、平均線への回帰を狙う逆張りです。トレンドは上向きなので、これも短期の利益確定として扱うのが基本です。
移動平均線の期間の選び方
グランビルの法則は「どの移動平均線を基準にするか」で見え方が大きく変わります。期間が短いほどシグナルは多く出ますがダマシも増え、長いほど反応は鈍いが信頼度は高まります。
| 期間 | 向いている使い方 |
|---|---|
| 5日・25日 | 短期売買・デイトレ〜スイング |
| 75日 | 中期スイングのトレンド確認 |
| 200日 | 長期トレンドの大局判断 |
一般的には日足なら25日線を基準にするのが扱いやすく、より大きな流れは75日・200日線で確認します。複数の期間を重ねて、短期のシグナルが長期トレンドと同じ方向を向いているかを見ると精度が上がります。
乖離率の考え方
買い4・売り8の「大きく乖離した」を客観的に測るのが乖離率です。次の式で計算します。
乖離率(%)=(株価 − 移動平均線)÷ 移動平均線 × 100
例えば25日線が1,000円で株価が1,100円なら乖離率は+10%、株価が900円なら−10%です。プラスが上方乖離、マイナスが下方乖離を示します。
どのくらいで「離れすぎ」と判断するかは銘柄のボラティリティによって異なります。値動きの穏やかな大型株なら±5%程度でも過熱、値動きの荒い小型株やグロース株では±15〜20%まで離れることも珍しくありません。過去のチャートでその銘柄がどの乖離率で反転してきたかを確認し、銘柄ごとの目安を持つことが実践的です。
ダマシと他指標との併用
グランビルの法則は強力ですが、移動平均線一本だけで判断するとダマシに引っかかります。特に株価が平均線に絡みついて何度も上下する「もみ合い相場」では、すべてのパターンが機能しにくくなります。
信頼度を高めるために、次のような視点を組み合わせます。
- 出来高:シグナル発生時に出来高が増えているか。方向感を伴う動きは出来高が裏付ける
- トレンドの大局:そもそも今が上昇・下落・横ばいのどの局面か。ダウ理論とは の高値・安値の切り上げ/切り下げで確認する
- サポート・レジスタンス:反発・失速ポイントが節目と重なっているか。トレンドライン・サポート・レジスタンスの引き方 を併用する
- オシレーター系指標:乖離を狙う逆張り(買い4・売り8)では、RSIやストキャスティクスの売られすぎ・買われすぎと重ねると精度が上がる
実践の注意点
- 逆張りは短期と割り切る:買い4・売り8はトレンドに逆らう取引。深追いせず、平均線への回帰で利益確定する
- トレンドの方向に沿う取引を優先する:初心者はまず買い2・3(押し目買い)、売り6・7(戻り売り)など順張りのパターンから習熟すると失敗が減る
- 平均線の傾きを最重視する:横ばい・もみ合いではシグナルが乱発する。傾きが明確な相場でこそ機能する
- 損切りラインを先に決める:どのパターンでも、想定と逆に動いたときの撤退基準を必ず用意しておく
まとめ
- グランビルの法則は、移動平均線と株価の位置関係を買い4つ・売り4つの計8パターンに整理した手法
- 買いは「上抜け・押し目・平均線上での反発・下方乖離からの反発」、売りはその鏡像
- 期間は25日線を基準に、乖離率で「離れすぎ」を客観的に測る
- 逆張りパターンは短期のリバウンドと割り切り、出来高・トレンド・節目と併用してダマシを避ける
免責事項: 本記事は筆者個人の見解をまとめたものであり、投資助言や売買推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。